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薔薇園の青い小鳥



はじめに

昔々、あるところに、ロマンチックなエピソードで知られる、美しい薔薇園がありました。

訪れた 人々は、ドームの中で愛の告白をし、そして、薔薇を植えるのでした。その愛が、ずっと、続くことを願って。

そして、たくさんの恋人たちがその薔薇園で産まれたのでした。




1

ある少女が、薔薇園の状態を確認するために現れました。

その子の名前はガブリエルといいました。

ガブリエルは庭園の管理者で、花や動物、そして、小さな子供たちが大好きな、 優しく、美しい女性でした。

そして、みんなから、好かれていました。



彼女の魅力的な純粋な笑顔は、薔薇園を訪れる人々を元気にし彼女も、そうできて、嬉しかったのでした。

そこで働くのが、好きでした。

薔薇園を歩くといつも、新鮮な薔薇の香りで、心穏やかに、そして、幸せになれるのでした。



2

ある日、ガブリエルが注意深く、それぞれの花の状態を確認していた時に、小さな青い鳥を見つけました。

その鳥は、とても弱っているように見えました。

ガブリエルは作業を中断して、その鳥を優しく、ガブリエルの部屋に運びました。

そして、ガブリエルは、その鳥をラファエルと名付けて、介抱することに決めました。



3

“私はいつも、あなたみたいなお友達がほしいと思っていたの。

ここが、あなたの新しい家よ。

ずっと、ここにいていいのよ。”



ガブリエルはいいました。



ラファエルを迎えるために、ガブリエルは、美しいかごさえ、買ってしまいました。

そして、ラファエルは、ガブリエルの素晴らしい心遣いによって、日に日に、良くなっていきました。

そして、幸せそうに、部屋の中を飛びはじめました。

ラファエルが、あまりにも、幸せそうに飛び回るので、結局、ガブリエルは、ラファエルの好きなようにさせて、かごは使うことはありませんでした。

そして、ラファエルは、子供のように、ガブリエルの胸元で、毎日、眠るのでした。



4-1

ラファエルは、ガブリエルのことが本当に好きで、感謝していて、どうやったら、お返しに、ガブリエルを幸せにできるか、考え始めました。

実際のところ、ガブリエルは、外では、笑顔でしたが、部屋で一人の時には、すごく、悲しそうに見えました。

ラファエルは美しい鳴き声で、彼女を元気づけようとしましたが、うまくいきませんでした。

実は、ガブリエルは、辛い恋愛で、悲しい思いをしていたのでした。

ガブリエルは好きな人がいましたが、一年前、突然、連絡を断たれ、それでも忘れられずにいたのです。

二年前、ガブリエルは、留学中に、デレックという男の子と出会いました。

デレックは、美しい島の出身で、ハンサムで、感受性の高い少年でした。

そして、いつも、ガブリエルに優しく、まもなく、ガブリエルは恋に落ち、デレックと交際をし始めました。

ガブリエルの両親は、ガブリエルが、恋に狂ったとさえ言いましたが、彼との出会いは、彼女の一生を変えてしまうほどでした。


4-2

ガブリエルとデレックは、もう一度、会うつもりでしたが、長い、酷い嵐のために、港は閉鎖されていました。

その間に、二人は、手紙を交換することに決めました。

ガブリエルとデレックはいつも、お互いの手紙、そして、ちょっとしたプレゼントを見つけると、嬉しくなりました。

まるで、相手が近くにいるように。

ガブリエルが、美しい薔薇を手紙に入れたと思えば、デレックは、海岸近くでとれた花を入れました。

そういうわけで、ガブリエルの机には、たくさんのお手紙、ドライフラワー、そして、写真立てがおかれていました。

手紙は、お互いが交換し合ったもので、机に置かれた花は、デレックからの贈り物でした。

そして、写真は、二人が去年、一緒にとったものでした。

すべてが、彼女を幸せにするものでした。

しかしながら、それでも、突然、デレックは返事をしなくなったのでした。

それは、まったく、悲痛なものでした。

ガブリエルは全く、今の状況が嫌でした。

どうして、デレックが連絡をやめたのか、わかりません。

“誰か、他に好きな人を見つけたんだ。”

そうとも思いましたが、忘れることはできません。

デレックとの思い出は、捨て去るには大きすぎたのです。

どれだけ遠くにいても、彼の存在は大きいのです。

毎日、夜になると、ガブリエルはキャンドルに火を灯しました。

キャンドルの灯は、いつも、彼女の心を鎮めたのでした。

そして、ジャスミンティーとチョコレートを運んできて、机の上に置きました。

優しいアロマは、いつもガブリエルの気分を良くさせるのでした。




4-3

それから、ペンを取り、デレックあて手紙を書き始めました。



これが彼女の習慣でした。

しかしながら、返事をしない相手に手紙を書くのは、ひどい気分で、その日に限って、想いを綴ってる間に、とうとう泣き出してしまいました。



5

ラファエルは、もはや、耐えられませんでした。

体が十分に良くなっていていないとは分かっていましたが、夜明けとともに、窓から、海に向かって飛び出しました。



ガブリエルが書き終えたばかりの手紙を携えて。

正確な場所は知りません。

“でも、海を渡れば、たどり着けるのだろう。”

デレックの手紙から香るわずかな潮の香、そして、机の上に置かれた特別な種類の花から、本能的に、海を越えたところに、手紙の持ち主がいることを理解していました。



ラファエルは、遠くへ、遠くへ、力の限り、飛んでいきました。

ラファエルは過去に大事なパートナーを亡くしていました。



だから、

カップルたちが、お互いに長い間、会えないという事がどれだけ辛いことか分かっていたのです。

ガブリエルの立場を考えると、こうせざるをえなかったのでした。



6

海岸の近くに灯台が立っており、そして、その近くに、白い建物が見えました。

それは、深刻な病気でデレックが運び込まれた病院でした。

デレックは繊細で美しい少年でした。

ガブリエルに会えないことによる鬱的症状は酷い疾患を引き起こし、

そこへ運び込まれたのでした。

だが、病院での手厚い治療にもかかわらず、デレックの症状は、次第に悪くなっていきました。

手紙も電子機器も許可されていませんでした。

デレックの主治医、ダリアは愛は毒薬になりえることを知っていました。

だから、少なくとも、今は、ラブロマンスは脇において、治療に専念して欲しいと思いました。

デレックは、このような深刻な状況にあり、これこそが、彼が連絡を取れない理由でした。

今としては、彼が出来ることといえば部屋から空を見上げ、彼女の平安を願うことだけでした。

そこへ、どこからか、美しい鳥が飛んできて、窓の前に止まりました。



それは、ラファエルでした。

デレックは親近感を覚えました。

ガブリエルが恐らく、好みそうな鳥だと思ったのです。

ラファエルは、町中を探し回ったのでしょう。

非常に疲れて見え、翼には、傷を負っていました。

彼の姿を認めると、窓の傍に手紙を置きました。

彼は、なんだろうと不思議に思いましたが、それをとりました。

封筒にかかれた署名を見て、彼はすぐに、その手紙がガブリエルから、彼宛に書かれたものだと理解しました。

それは、驚きでしたが、奇跡が起きたものとも彼は思いました。

彼の主治医から、彼はこのままではそんなに命は長くないと宣告されていたのです。

彼の最後の望みは、ガブリエルの幸せだけでした。

彼は手紙をあけました。



"私のデレック…"



彼が最も会いたくて、愛している人によって書かれた文字が現れました。

彼は、まるで、彼女が、目の前にいて、彼の胸で泣いているように感じました。

彼女の悲しみに濡れた愛のメッセージは、彼の空虚な心を満たし、そして、読んでいるうちに、涙が彼の頬を伝って流れました。

“これを届けてくれたのか。

本当にありがとう。

しかしながら、僕の人生はもうすぐ終わるだろう。

彼女に、どれだけ、僕が愛していたか、伝えてほしい。”

ラファエルに、そういって、手紙を書き、急いで、渡しました。



7

ラファエルは彼女のもとへ帰っていきました。

それは、ラファエルにとって、最も長く空を飛び、そして、人生の最後となるものでした。



ラファエルがガブリエルのもとにたどり着いたときには、ラファエルは疲れ果てており、そして、深刻な傷を負っていました。

“なんてこと、いったい、どこにいたの?! 本当に心配したのよ。”

驚いたガブリエルは、ラファエルを手のひらに来させました。

ガブリエルの顔を見て、ラファエルは、安堵し、そして、ついには、静かに、彼女の愛を感じながら、手のひらの上で命を終えたのでした。

ガブリエルはショックを受けて、ラファエルを手のひらに抱いたまま、むせび、泣き始めました。

それから、ラファエルが運んできたものはなんだろうと思い、手紙を開けました。

驚くことに、ガブリエルが目にしたものは、デレックからの一片のノートと、結婚指輪でした。

“え?!”

困惑しましたが、すぐに、ラファエルが、デレックを探すために、長い距離を旅してきたことに気づきました。



“ラファエル、ごめんなさい。

あなたは、そんな優しいことをしてくれたのね。

ありがとう。”



長く続く大嵐のために、人々は外出を制限されていました。

人々は、もはや、未来もなければ、愛もないのだと思いがちでした。

しかしながら、未来も愛も、確実に、暗闇の外に存在するものなのです。

ガブリエルは、ラファエルの体を強く抱きしめて、強くなることを誓ったのでした。





8

数年の時が流れました。

長かった嵐は過ぎ去ろうとしていました。

港は再び開きました。

デレックは奇跡的にも治りました。

ガブリエルの最後の手紙は一本の光となり、彼に生きる希望と力を与えたのでした。

愛とは、まさしく、どのような状況であっても、暗闇に浮かぶ一筋の光なのです。

病院を出てからすぐ、デレックは彼女のもとへ急ぎました。

それは、ガブリエルが普段の作業を行っている最中でした。

彼の突然の来訪は、彼女を驚かせました。

お互いの姿を認めた後、ガブリエルはじょうろを落とし、そして、彼のもとへ走っていきました。

それから、二人は長い間、その薔薇園で抱擁をしました。

彼らの時間は変わっていなかったのです。

たとえ、建物、道路、そして、社会が変わってしまっても。

彼の胸と匂い、彼女に向けたまなざしは、一切、変わっていませんでした。

その日のうちに、彼は薔薇を差し出しました。

そして、彼らが約束したように、ラファエルが安らかに眠るお墓の前で結婚しました。

葉と花の香りが風に吹かれ飛んでいき、そして、どこからか、美しい、鳥の声が聞こえました。





おしまい

Written & read by RanseRanse for Love Children Animals Over Borders


The inserted sounds have been played by RanseRanse.

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